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ドラえもん最終話リメイク (連載第1回) |
さて、5月28日の「今日の一言」で告知していた、「ドラえもん最終話、リメイクシリーズ」を、いよいよ今日から始めたいと思います。では、はじまり、はじまり。 ----------------------------------------------------- 「のび太くん、もう起きないと遅刻するよ。のび太くん、ねえのび太くんったら」 「のび太さん、あ〜ん」 「ああ、ドラえもん」 |
6月1日(火)2004 いつもの朝
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ドラえもん最終話リメイク (連載第2回) |
「うわー、また遅刻しちゃうよ」 全力疾走するのび太。だが、学校までの道のりの3分の1も行かないところで息が上がり早くも失速。膝に両手を突いて息を整える。朝だというのに、初夏の太陽がジリジリと、のび太のうなじを照りつけている。 「ウ〜」 そのとき不意に、何かのうなり声が聞こえた。おそるおそる顔を上げるのび太。すると、大きなブルドックがそこに居て、のび太を狙目つけている。 「ウ〜、ワンッ、ワンッ」 「わー、犬だ!」 駆け出すのび太に追いかける犬。息が上がっていたのも忘れ、のび太はやたらめったら走った。そして、どこをどう走ったのか、ようやく学校の校門が見えきた。気がつくとブルドックはいつの間にか消えていた。 「野比、野比は居ないのかー?」 始業のチャイムが鳴り、ホームルーム後、一旦職員室に戻っていた先生が、テスト用紙を持った社会科係りを伴って教室へ入って来た。 |
6月2日(水)2004 HR
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ドラえもん最終話リメイク (連載第3回) |
「あー、今からテストをするが、その前に、前回の答案を返すから、名前を呼ばれたら前まで取りに来るように」 先生が答案用紙の束をめくりながら、一人一人に手渡して行く。一通り全員に採点された答案が返されると、先生はクラスを見回して言った。 「今回は全体的に良くなかった。ちゃんと予習と復習をしなくちゃいかんな」 全体的に良くなかった、という先生の言葉に少しホッとしたのび太は左隣に座っているしずかちゃんに耳打ちした。 「しずかちゃんは何点だったの?」 「えー?恥ずかしいわ」 のび太は、しずかちゃんも点数が悪くて恥ずかしいのだと勘違いした。 「ねぇ、教えてよー。ぼくも恥ずかしい点数だから大丈夫だよ」 えー、そうなの?と言うしずかちゃんの点数を盗み見るのび太。そこには98と書かれていた。 「きゅ、98てん?!」 「ええ、のび太さんは?」 「ぼ、ぼくは、いいじゃない?」 焦りまくるのび太。しずかの目に触れないように、テスト用紙を裏返しにして後ろへ隠す。すると、それを後ろの席のスネ夫がかすめ取った。 「のび太、3点だってさ〜」 「ははは、3点かよ、ははは」 スネ夫とジャイアンが意地悪そうに笑う。うなだれるのび太。 「よしなさいよ。二人とも」 「こら、お前達何やってるんだ!」 先生がやってきて、騒いでいたスネ夫とジャイアンを睨む。 「お前達も野比の事を笑えるような点数じゃなかったぞ」 「スミマセン、先生」「反省してます」 と、スネ夫とジャイアン。先生がスネ夫の手から答案を取り上げ、のび太へ返す。 「野比と骨川と剛田は同じ点数だった」 先生の言葉に教室が沸く。 「こらこら、お前達、笑い事じゃないぞ。今回は本当に皆、良くなかった。何なら、全員の点数を読み上げてもいいんだぞ」 教室が静まり返る。 「今回、満点だったのは出来杉だけだった」 お〜、という静かな歓声と共に、皆の視線が一斉に出来杉に向けられた。顔を赤くして照れる出来杉。 「よし、それじゃあ、今日の分のテスト用紙を配る」 その日、簡単なはずの小テストで頭を抱えるのび太が、確かにその教室に居た。 |
6月3日(木)2004 テスト
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ドラえもん最終話リメイク (連載第4回) |
放課後。のび太は教室で自分の席に座ったまま背をまるめ、何やらやっている。 「のび太〜!まだ、こんなところに居やがったのかよぉ!今日は野球やるって言っただろ!」 ジャイアンがバットを手に教室へ入って来るなり喚いた。だが、のび太はジャイアンの声も耳に入らず、何かに熱中したままだ。 「おい、コラのび太!聞いてんのかよ!」 ジャイアンがのび太の背をど突く。前につんのめり、のび太は額を机に打ち付けた。 「ああ、ジャイアン。何するんだよ、もうすぐ新作が完成しそうだったのに!」 見ると、のび太の手元には崩れた綾取りの赤い毛糸がまるまっていた。 「野球だって言ってんだろ!早くしろよ!」 「もう、ジャイアン!綾取り壊れちゃったじゃないか!謝ってよ!」 のび太が珍しく言い返した。 「なんだとのび太〜」 のび太を睨むジャイアン。 「分かった、分かったよ、ジャイアン。すぐに行くからさ」 「おう、すぐ来いよ。遅れたらひどいからな」 ジャイアンは踵を返すと、バットを肩に、意気揚々と教室から出て行った。 「のび太!ここで打たなかったら承知しないからな!」 試合終了後、グラウンドでミーティング。ジャイアンは怒りを抑えきれない、といった様子だ。それでも、なんとか監督兼エースらしく話しを始める。 |
6月4日(金)2004 綾取り、野球
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ドラえもん最終話リメイク (連載第5回) |
「ただいま〜」 のび太は靴を脱いで家に上がる。 「おやつはテーブルの上にあるわよ。手を洗っていただきなさい」 台所で夕飯のしたくをするママの声を聞きながら廊下を歩き、洗面所で手を洗う。居間に入ると、テーブルの上にドラ焼きが置いてあった。 「よし、これでドラえもんに助けてもらおう」 今日の野球の事をジャイアンに忘れさせようと考えたのび太は、ドラ焼きを持って階段を上がって行った。自分の部屋の入り口を勢い良く開けるのび太。 「ドラえもんただいまー」 返事が無い。部屋を見回すと、ドラえもんは押入れの方を向いて座っていた。 「あれ?居るんじゃないか。ただいま、ドラえもん」 ドラえもんの肩を軽く叩くと、そのままドサッと音を立てて畳の上へ横倒しになった。何かの冗談だろうか。のび太はドラえもんを揺すってみた。が、何の反応も無い。スイッチが切れているのかも知れないと考えて、何度かシッポのスイッチを押してみる。 「ドラえもん!、ドラえもん?、ドラえもん!!」 のび太は、窓から深く差す夕刻の太陽に照らされたドラえもんをいつまでも揺すっていた。 「のび太、ご飯よー」 「ドドド、ドラミちゃーん!」 |
6月5日(土)2004 ドラえもん
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ドラえもん最終話リメイク (連載第6回) |
ドラミのタイムマシンは、ドラえもんのものよりも高性能な22世紀の最新型だ。ドラえもんのタイムマシンが、机の引き出しやクローゼットの扉などにその出入り口を偽装したタイムトンネルの内側だけを移動するタイプであるのに対して、ドラミのタイムマシンは任意の場所に空間の歪みを作り出し、どこにでも出現することができる。また、ドラえもんのタイムマシンは、カーペットのような形をしていて、人はその上に乗るだけというものだが、ドラミのものはチューリップのような形をした乗り込み型である。その高性能なドラミのタイムマシンが、21世紀初頭の、のび太の部屋へ現れるのに、たいした時間はかからなかった。 チューリップ型のタイムマシンから、のび太とドラミが駆け出て来る。 「お兄ちゃん!」 ドラミが声を掛けても、やはりドラえもんは動かない。のび太がしきりに心配そうにしている。ドラミはポケットからロボット用診断装置を取り出して、先に吸盤のようなものが付いたチューブを何本もドラえもんに取り付けてゆく。ドラミが装置を操作すると、画面にデータが表示され始めた。 「ドラミちゃん、ドラえもんは大丈夫なの?」 ドラミは真剣な表情でそのデータを読み取っている。 「ねぇ、ドラミちゃん」 のび太の問いかけに、答えるともなく、ドラミが言った。 「原子炉が止まってる…」 そして、のび太に振り返った。 「のび太さん、おにいちゃんを22世紀の工場へ運びましょう。今すぐに」 ドラえもんをドラミのタイムマシンに運び込み、ドラミとのび太もタイムマシンに乗り込むと、チューリップのドアが自動で閉じた。 「ドラミちゃん。ドラえもん、悪いの?」 |
6月6日(日)2004 未来へ
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ドラえもん最終話リメイク (連載第7回) |
22世紀のネコ型ロボット工場。ドラミから超時空通信で連絡を受け、待機していた修理担当クルー達の目の前に、突然、空間を歪めながらドラミのタイムマシンが現れた。チューリップのドアが開くと同時に修理クルー数名が担架を持ってタイムマシンへ駆け込み、ドラえもんを収容すると直ちに工場の奥へと消えて行った。 「ドラえもん!」 のび太とドラミもそれを追いかけようとしたが、警備ロボットに制止される。 「修理ラボ内部は企業秘密です。しばらくの間、待合室でお待ちください」 「ドラえもん…」 警備ロボットの後について待合室へ向かう。工場内の通路を移動中、聞き覚えのある声にのび太とドラミは振り返った。 |
6月7日(月)2004 ロボット工場
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ドラえもん最終話リメイク (連載第8回) |
やがて、待合室のドアが静かに開いた。のび太、セワシ、ドラミの視線が一斉にそちらへ向く。見ると、そこには白衣を着た白髪の、小柄な老人が立っていた。 「猫田博士…」 ドラミが呟く。 「やあ、ドラミ君、久しぶりだね」 「あの、こちらはネコ型ロボット統括センター長の猫田博士」 ドラミは、のび太とセワシに振り返って説明する。 「ドラえもんの事なんだが…」 「ドラえもんは直るんですよね?!」 のび太の言葉に、一瞬ためらってから、猫田は話を続けた。 「直る、とも言えるし、直らないとも言える」 「メモリ…ですね」 セワシが顔も上げずに呟いた。猫田が頷く。 「今回のドラえもんの故障は原子炉だけだ。本来なら、ネコ型ロボットの原子炉が故障しても原子炉ごと交換すれば何の問題も生じないが、ドラえもんの場合は、原子炉を交換するために一瞬でも原子炉を取り外すと、今までの記憶が全て無くなってしまう」 「耳が…無いから」 「その通りだよドラミ君。普通のネコ型ロボットは、耳に記憶保持のためのバックアップバッテリーが収納されている。耳のバッテリーの容量はほんの僅かだが、原子炉を交換する間位は記憶を保つことができる。しかし、ドラえもんには耳が無い」 「でも、原子炉は止まってしまっているんでしょう?今のところ、ドラえもんの記憶は、大丈夫なんですか?」 猫田はセワシに視線を向けた。 「うむ、今のところは大丈夫だ。原子炉の中にある燃料電池が作動しているからね。このまま放っておいても、記憶の方は、あと30年は大丈夫だろう。だが、燃料電池だけでドラえもんを駆動した場合、せいぜい3日でエネルギーを使い果たす。そうなったら、ドラえもんの記憶は永久に失われてしまうことになる。そうならないために、ネコ型ロボットは原子炉が止まると自動的にスリープに入るように設計されているんだよ」 「何か方法は無いんですか?現在止まってる原子炉を外さずに、一旦、別の原子炉を同時に繋いでおいて交換するとか…」 ドラミが口を挟む。のび太は全く会話について行けていない。 「ドラえもんの原子炉は小型核融合炉だ、一つが停止しているからと言って、同時に二つ繋ぐような危険は犯せない。場合によっては、ここを中心とした半径数百キロが吹き飛ぶことになる。バックアップの電源を繋ごうにも、ドラえもんは製造過程におけるブラックボックスが多すぎて無理なんだよ。これは、ドラえもんの類似品を作られないための配慮なのかもしれないが、ドラえもんの設計者以外は誰もその方法を知らないのだ」 「耳を、もう一度つけたらどうですか?」 と、これはのび太。猫田は首を横に振った 「ネコ型ロボットの耳は、その個体が作られるときにバイオ技術で自己成長させて自動生成する。後から付けられる類の物ではないんだ」 「タイム風呂敷で、耳が無くなる前までドラえもんを戻したら?」 と、これものび太。ドラえもんの事となると、頭の回転が速くなるらしい。 「同時に、ドラえもんの記憶も、その頃の物に戻ってしまうけれどいいのかい?タイム風呂敷は、実際の生き物の時間を戻す場合は記憶の混乱を避けるために元の記憶を残すが、ロボットは記憶も含め、時を戻した分、全て元に戻ってしまうんだよ」 |
6月8日(火)2004 ドラえもんの記憶
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ドラえもん最終話リメイク (連載第9回) |
黙り込む一同。暫くの間、誰も言葉を発さなかった。 「ドラえもんの設計者に頼んで、直しては貰えないんでしょうか」 重い沈黙を最初に破ったのはセワシだった。 「さっき、猫田博士は、ドラえもんの設計者以外は誰も方法を知らないって言ってましたよね。なら、ドラえもんの設計者に頼めば…」 猫田は静かに首を振った。 「ドラえもんの設計者はもう亡くなっているんだ。しかも、生きていたときからその人に関する事柄は全て重要国家機密とされていた。だから、タイムマシンで会いに行くこともできないんだよ。さらに、噂によると、その人の周りの時空は、常にタイムパトロールが厳重に監視しているらしい」 「タイムパトロールが…。でもなぜ?」 「パラレルワールド、というのを知っているかね?」 セワシの質問に、逆に猫田は質問で返した。一同が猫田の顔を見た。 「例えば、ここに、ケーキが一つあったとしよう。そして、ドラミ君が、このケーキを食べようかどうか迷っていたとすると、次の瞬間には、ドラミ君がケーキを食べることを選択した世界と、食べなかった世界が同時に存在することになる。これがパラレルワールドだよ。我々人類にとって、ドラミ君がケーキを食べようが食べまいが大した問題ではないが、これがもっと重要な決定だったら、自分達の世界が、悪い方の決定をした結果生じる世界に移行しないように十分注意しなくちゃならない。ただし、歴史をねじ曲げることは時空法によって禁じられているから、それぞれの時代のタイムパトロールが、それぞれの時代を監視するシステムになっているのだけれどね」 ポカンとした顔で猫田を見つめる一同。 「いや、つまり、ドラえもんの設計者は、なんらかの形で歴史に係わっているんだろうってことさ。もしかしたら、ドラえもんの設計者の名前が公表されると、ドラえもんの発明自体が無くなってしまうようなことにさえなるのかもしれない。もしそうなら、タイムパトロールがやっきになって秘密を守ろうとするのも頷ける。ドラえもんタイプのネコ型ロボットの活躍で、かつて、危機的な核戦争が回避されたことがあったのだ。つまり、ドラえもんが発明されなければ、人類そのものの存続が危うかったということだ」 |
6月9日(水)2004 パラレルワールド
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ドラえもん最終話リメイク (連載第10回) |
一呼吸おいてから、猫田は3人を見回し、言った。 「ネコ型ロボットはヒト密着型のトモダチロボットだ。人の心に深く入り込み、家族同然になる。だから今までの記憶が無くなるというのは、非常に辛いことだろう。だが、今言ったような理由で、ドラえもんを直すには、他に方法が無いんだよ」 下を向いて黙っていたのび太が、顔を上げた。 「ドラえもんに会わせて下さい」 戸惑う猫田。 「だが、ドラえもんは…」 「ええ、動かないのは分かっています。ただ、ドラえもんに会いたいんです」 一瞬猫田は考えてから、言った。 「よかろう、ではついて来たまえ」 のび太、セワシ、ドラミの3人は、猫田の後に付いて待合室を出た。工場の長い直線の廊下を暫く歩くと、警備ロボットが入り口を固めている扉の前で止まった。そこが、修理ラボへの入り口である。本来、修理ラボへ一般の人間が入ることは許されていないが、猫田が警備ロボットに二言、三言話すと、すぐに、のび太達にも入場が許された。 修理ラボエリアは思いの他広かった。入り口を入ると、まず中庭のように大きく開けた空間があり、そこに、小さな建物がいくつも建っていた。のび太達は猫田に付いてその中の一つのビルに入る。エレベータに乗ると猫田は191階のボタンを押した。外からは精々3階建て程度にしか見えないビルだったが、どうやら中は四次元構造になっているらしい。 |
6月10日(木)2004 修理ラボ
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ドラえもん最終話リメイク (連載第11回) |
猫田に促されて、ドアの中に入るのび太、セワシ、ドラミの三人。そこは30畳程の薄暗い円形の部屋で、部屋のほぼ中央にある手術台のようなものだけが、スポットライトの灯りに照らし出されていた。 「ドラえもん!」 台の上にはドラえもんが横たわっていた。駆け寄るのび太。ドラえもんは腹部のカバーが外されたままで、そこから内部の機械が見える。のび太には、ドラえもんが僅かに微笑んでいるように思えた。 「ドラえもん…」 のび太は、台の上のドラえもんに触ろうと手を伸ばしかけたが、途中で思い留まって、その手を戻した。そして暫くの間、のび太、セワシ、ドラミの三人は、無言でドラえもんを見つめていた。 やがて、猫田が近寄ってきて、言った。 |
6月11日(金)2004 決断
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ドラえもん最終話リメイク (連載第12回) |
のび太は猫田の用意したペンを取り、書類にペン先を押し付けた。のび太の手が震えている。 「おじいさん!本当に、それでいいの?!」 セワシが叫ぶように言う。 「だって。だって、もうドラえもんに会えないなんて、ぼくには耐えられないんだよ!」 のび太はそう言うと、目をつぶったまま一気に自分の名前を書いた。 野比のび太。ドラえもんの記憶が失われることに対する同意書に、確かにその名前が書かれた。その見返りは、元気なドラえもんの姿。猫田はその書類を見て、言った。 のび太はついに、赤いボタンを押した。コンピュータの無機質な音声が、スピーカーから流れ始める。 |
6月12日(土)2004 取り消されたアクション
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ドラえもん最終話リメイク (連載第13回) |
21世紀初頭、のび太の部屋。ドラえもんは、押入れの上の段に、いつもと同じように横たわっている。のび太が修理を拒否したドラえもんを、セワシとドラミに手伝ってもらい、22世紀のロボット工場からのび太の部屋まで運んだのだ。セワシとドラミは少し前に未来へ帰ったところである。真っ暗な部屋で、のび太は上半身を押入れの上の段にもたれさせ、そこに横たわるドラえもんを眺めていた。 「ドラえもん・・・、ぼくにはドラえもんの記憶を消すことなんて、できなかったよ。だってさ、どんな顔をして、今更ドラえもんに、はじめまして、なんて言ったらいいんだい?」 そして、のび太はそのまま、うとうとと眠ってしまった。その晩、のび太はドラえもんの夢を見た。 次の朝、のび太は布団で目覚めた。ドラえもんが布団を敷いてくれたものと思い、のび太は飛び起きた。そう、ドラえもんが故障なんてする筈がないんだ。 「おう、のび太!待ってたぞ」 |
6月13日(日)2004 次の朝
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ドラえもん最終話リメイク (連載第14回) |
その日の放課後。のび太は何かを思いついて、自分の住む練馬エリアで一番大きな図書館へと向かった。図書館に到着すると、一目散にロボット工学の棚を目指す。そこにはロボット関連の本が沢山並んでいた。とりあえず、その中から適当な本を一冊取って開いてみたが、何が何やら、のび太には全く理解ができなかった。それでも、のび太は、その棚にある本の中から、一番簡単そうなのを借りて帰った。 家に戻ってからは、夕飯の間以外、図書館から借りてきた本をずっと読んでいた。だが、その本に載っているロボットは、ドラえもんよりも遙に単純な構造の工業用ロボットばかりであったにも関わらず、のび太には、全く理解不能であった。 あくる日も放課後になると、のび太は図書館へ向かった。昨日借りた本を返すために。一番簡単だと思われた本でさえ全く理解できず、のび太はかなり落ち込んでいた。だが、まだ図書館に行けば、何かヒントがあるかもしれない、という根拠の無い希望は僅かながら持ち続けていた。 |
6月14日(月)2004 出逢い
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ドラえもん最終話リメイク (連載第15回) |
「きみは、将来、ロボットの研究者になりたいの?」 「はい!絶対に!」 のび太の勢いに、その人は、少し訝しく思い、訊いた。 「でも、どうしてだい?」 その質問にのび太は答えない。というより、答えられない。未来ロボットなんて、普通の人は信じてくれる訳がない。その人は、のび太の顔をじっと覗き込んだ。 「ま、理由なんてどうでもいいや。立ち話もなんだから、ちょっと、そこのカフェに入ろう。奢るよ」 店に入り席に着くと、すぐにウェイトレスが注文を取りに来る。 |
6月15日(火)2004 カフェ
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