お気に入り、その3: 機械式ウォッチ
正確でタフなクオーツの時計も決して嫌いではないが、私はやはり、ゼンマイで動作する機械式時計の方が好きだ。巻き上げられたゼンマイの動力が、一番車と呼ばれる最初の歯車に伝わり、それと咬み合ったすべての歯車を動かして行く。それら歯車の回転は、テンプ環に取り付けられた髭ゼンマイと呼ばれる髪の毛程の太さの小さな針金の輪が振動する周期によって制御されている。

耳を近づけるとカチコチ音がする。電池や電子回路を一切使わない。少しレトロな味がある。機械式の時計は、持ち主と共に、正に時を刻み、歴史を共有する、そんなアイテムなのだ。

OMEGA Speedmaster: これは私にとっての始めてのメカニカルウォッチだ。当時大学生だった私はアルバイトをしてこの時計を入手した。あれから15年近くが経過したが、故障らしい故障も無く、今も正確に時を刻んでいる。(2004年現在)
ケースは3重構造になっていて、とにかくタフ。NASAの公式ウォッチとしても知られている。ケースの裏には"The first watch worn on the moon"(月面で着用された最初の時計)の文字が刻印されている。
IWC(International Watch Company) ref.3513"Portofino": IWCはスイス、シャフハウゼンに存在する、知る人ぞ知る機械式ウォッチメーカー。ドイツ車にも似た、質実剛健な作りと精度の高さがウリ。パーツの一つ一つに至るまで手を抜かない職人気質のメーカーで、内部の仕上げも美しい。シンプルな機能美で、ヨーロッパの貴族にもIWCのファンは多い。
個人的には、ちょっとフォーマルな服装のときに使用している。
ROLEX OYSTER DATE(super oyster仕様): この時計も大学時代に入手した物だが、アンティークショップで一目惚れして購入した。ロレックスと言うとねじ込み式リューズが一般的だが、このsuper oysterケースはリューズがねじ込み式ではなく、バネでパチンと内側に引き込むだけのタイプ。
super oysterは1950〜1953年頃に試験的に造られたのみで、あまり多くは現存していない。

休日のカフェ用。


番外編:機械式クロック
SEIKOSHA REGURATOR:SEIKOSHA(精工舎)とは、SEIOKOの前身である服部時計店の時計製造工場の名称である。1881年(明治14年)に創業した服部時計店が1892年(明治25年)、掛時計の製造を開始し、その製造工場を「精工舎」としたのが始まりだ。この、REGURATORに関してはいつ頃製造された物なのかは定かでないが、資料によると1924年(大正13年)にはすでに時計類の名称に"SEIKO"を使い始めているので、このSEIKOSHA REGURATORは1892年から1924年の間に造られたものということになる。また、文字盤裏の修理覚書には「昭和3年、藤ヶ崎」と書かれている。これは、昭和3年(1928年)に藤ヶ崎さんが修理したという意味なのだろう。掛け時計はそう頻繁に故障するものでは無いことを考え合わせると、この時計は恐らく100年程前に造られたものだと推察される。昭和3年に修理されてから、私が1992年にメンテナンスをするまでの64年間、誰も文字盤を外さなかったらしいという事にも驚かされる。
これが文字盤の下、時計本体である。100年も前に造られたとは思えない美しさ。まさに機能美だ。今でもこの時計は、私の部屋で正確に時を刻んでいる。
これが文字盤の裏側。もう随分サビも出ているが、前回の修理の日付と修理者の名前が読み取れる。

因みに、文字盤表の下方には小さくMade by NIMARU.Sと刻印されていた。そちらは恐らく製造者の名前だろう。