2004年 12月

ドラえもん最終話リメイク (連載第47回)                         

 アメリカから帰国してからののび太は、バイオ技術をロボット工学に応用する研究で大いに成果を上げ、多産な論文数とともに、研究者として高い名声を得ていた。しかし一方で、帰国当初順調と思われたドラえもんの修理は思うように進んでおらず、どうしても解決できないでいる課題が残されたまま3年が過ぎようとしていた。

「よっ、どうした、不景気なツラして!」
大学生協の食堂。ドラえもん修理の課題について考えていたのび太は、背中をドンと叩かれて我に返った。
「あ、山田さん」
振り返ると、山田がランチのトレーを片手にニヤニヤしている。山田はのび太の隣にトレーを置いて席に着いた。
「何か悩みでもあるのかい?」
山田の口調は昔からいつも変わらない。大学院生だった頃の山田が、小学生ののび太に勉強のやり方を教えてくれていたときのままだ。それは山田が教授になり、のび太が助教授となった今も全く変わってはいない。
「いえ、その…。大丈夫です」
歯切れの悪い返事でお茶を濁すのび太。山田は興味深そうに、のび太の顔を覗き込む。
「まあ、どんな問題でも、それを解決できるかどうかっていうのは、解決に必要なクリエイティブなアイデアが出せるかどうかが鍵だよ。行き詰まったときは研究室に閉じこもってないで、いっそ奥さんを誘ってドライブにでも行ってきたらいい。環境を変えると意外と良いアイデアが出たりするもんだ」
「ええ、本当にそうかも知れませんね」

 のび太は昼食を済ませると、その日の研究を切り上げて、大学の駐車場に停めてある自分の車に乗り込んだ。幸い今日は午後の授業も受け持っていない。エンジンをアイドリングさせたまま、携帯でしずかに電話を掛ける。
「しずかちゃん?今からドライブに行こうよ。うん、大丈夫、今日の仕事はもう終わったんだ。うん、じゃあ今から行くから」
のび太は駐車場のゲートを抜けるとアクセルを踏み込んだ。

12月20日(月) 2004 クリエイティブなアイデア 


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